クレイジーなルームメイト、メリーとのお話。
1話を読んでいない方はまずこちらから。

自称モデルの女が犯した失態②
メリーの猫おしっこ事件以来、自室のドアが勝手に開いているのが目立つようになった。
デビッド、メリー、わたし、それぞれの部屋には鍵がついていないから、入ろうと思えば誰でも入れる仕組み。
とはいえ他人様の部屋に入ることなんてしないし、それが常識ってなもんだろう。
閉めて出かけたはずのドアが、帰宅すると頻繁に開いているのよね…。
気味悪くなりデビッドに相談してみた。
R「ねぇ、閉めたはずのドアが勝手に開いているんだけど、部屋に鍵つけれないかな?」
D「うーん、物件オーナーに聞いてみないとだけど…ってかレイコ以外誰も入らないっしょ」
R「それがわたし部屋に入ったらメリーの猫が何度かいてさ驚いたのよね」
R「オシッコされてたこともあるし…」
D「あらまー。そしたらオーナーに聞いてみるよ」
R「助かる~、ありがとうデビッド」
後日彼がオーナーに相談したところ、費用がかかるからNOという返答で、結局お部屋に鍵がつくことはなかった。
それからというもの、帰宅したらわたしの部屋のドアを開けようとカリカリしている猫を見つけたり、ドアが半開きになっているときは猫が室内にいたことも。
わたしのベッドがマーキングされたのか、その後も何度かベッドシーツにおしっこが…(怒)
もうメリーに怒っても無駄なのはわかってるから何も言うことはなく、ただやり過ごしてた。
「飼い主がルーズだと飼い猫も無礼になるのか…」
無表情でおしっこシーツを洗濯機につっこむ。
猫のおいたはジワジワとわたしのストレス度合を上げていった。
それよりイラっとしたのはメリーだ。
彼女のところだけ汚部屋ならまだいい。
でも半年、1年と住んでいるうちにメリーの”汚”はキッチンスペースをも浸食してきたのだ。
これには耐えがたくイライラもMAX
まず食べ残しのある食器が、そのままテーブルの上に3日くらい放置。
キッチン横にあるごみ箱のフタが閉まらないほど、食べカスやら生ごみでいっぱいになる日々。
ゴミや食べかけの食器を、数日放置していたらどうなるか容易に想像がつくだろう。
…玄関のドアをあけるとコバエが渦を巻いてぶんぶんと襲ってくるし、閉まっていないゴミ箱のまわりを、黒い玉になったハエの大群が占拠しているのだ。
思い出しただけでも憎悪。
デビッドは料理をしない。
わたしは料理後、出たゴミはすぐに外の収集箱に捨てるから、家の中に置くなんて皆無。
食器も毎回洗うし。
となるとこの散らかし犯はメリーで確定。
耐えきれずデビッドがゴミ箱を掃除したり、わたしもメリーの食器を洗うことも。
「一体わたしは何をやっているんだか…」
あるときデビッドがこっそりわたしに教えてくれた。
D「レイコ聞いてよ。実はメリー家賃滞納してるんだよね…」
R「えっ!でも彼女Abbot Kinneyのアパレルショップで働いてるって言ってたよ」
D「うーん、どうやらそのショップもう辞めたぽくて」
R「メリーさ、モデルもやってるんじゃないの?」
D「それも正直怪しい感じだよ。何のモデルなんだか…」
R「たしかに何度かオーディション用に使う写真を撮ってとお願いされたけど、セクシー水着姿ばっかなのよね」
R「考えてみれば毎回水着なのも怪しいしな」
D「いや~メリーは悩みの種だよ…まったく」
わたし達にとってメリーという存在が徐々に厄介なものに…。
私物がなくなりだしたのもちょうどこの頃。
シャンプー、歯磨き粉、調味料とかホントちょこちょこしたものが確実に姿を消すように…。
はじめはそこまで気にならなかったけど、明らかおかしいと感じ始めた矢先、衝撃的なものを目にしてしまう。
それはある日、わたしがメリー部屋の前を通ったときのこと。
いつも閉まっている彼女部屋のドアが開いていたんだよね。
メリー部屋はドアをあけるとすぐ左側にキャビネット。
なんとその棚の上に、わたしが使っているルームスプレーが置いてあったわけ!
あれを見つけたとき、お尻から背中にかけてゾワッと鳥肌が立った。
「えっ…なんでわたしの部屋にあるはずのスプレーがここにあるのよ!?」
メリー部屋に体が入らないよう咄嗟に手を伸ばしスプレーを救出。
慌てて自室に駆け込んだ。
頭はパニック、心臓バクバク。
しばらくスプレーを握りしめ無になるわたし。
メリーはわたしの留守中、部屋に入っているんだ…。
ってことは、今までなくなったモノ全部メリーの仕業なの???
想像してみてほしい。
知らない間に他人がプライベートスペースに入り、自分のモノを勝手に触っていることがどれだけ気持ち悪いことか。
信じられないことに、戻したはずのルームスプレーが、またメリー部屋のキャビネットの上に置かれていたのだ。
ルームスプレーだけじゃない。
なんとわたしのTシャツまで開いたキャビネットから顔を覗かせているではないか!
これを発見したときのおぞましさたるや。
メリーはわたしがルームスプレーを自室に戻したことを知らないわけがない。
だってまたわたしの部屋から盗ったのだから。
何も言わずまた奪っていく神経。
そして悪びれる様子もなく、わたしのTシャツにまで手をかける始末。
極めつけは、また写真撮影をお願いされ、メリー部屋に入ったときのこと。
バスルームあるボディークリームを取ってきてほしいと彼女に頼まれ入ると、なくなったはずのシャンプーが目に入る位置におかれていた。
いち髪。
ってかこれ日本の製品だし、なくなったモノと同じだよ!
わたしがこのシャンプーを目にするであろうことくらいわかるのに、それを知った上でクリームを取りにいくよう命じたの?
何?わたしに反応してほしいわけ?それかただのバカなの??
さらなる決定打をぶちかまされたわたしは、怒りと恐怖で放心状態に。
何事もなかったのようにクリームを渡し、さっさと撮影を済ませ自室に戻った。
メリーは完全に狂っている…。
彼女に問いただしたところでダメージなんて受けないだろうし、それがどうした?ってなもんだろう。
わたしはこれらに蓋をし、ある答えを導いた。
ここを出よう。
だって気づいていないだけで、ひょっとしたら他にもなくなったものがあるかもしれない。
何よりわたしのいない間に自室をウロウロされているなんて気持ち悪すぎるでしょ。
こんな恐ろしいところで住んでられない、デビッドに退去を申し出た。
事情を話すことなく、次の家が決まったとだけ伝えて。
まぁ彼も察したか、それ以上突っ込んでくることはなく。
ちょうどその頃、ほぼ毎日殿様の家にいたからそのまま同棲する流れになり。
そうしてわたしは恐怖の家から見事脱出。
しばらく経ってから何気ないデビッドとのやりとりで聞いた話。
メリーは半年家賃を滞納し、結局家から追い出されたんだって。
そして彼女が出たあとの部屋は、鼻がもげるほどの異臭、酷く汚れたカーペットにカビだらけのバスルームと凄まじい状況で、オーナーが激怒したとか。
そりゃそうだわな。
だって真の汚部屋だったもん。
デビッド宅を出てからメリーがどうなったのかはもちろん知らない。
つくづく思う。
どれだけ外見がよくても、内面や根本的に人としてダメな人間は救いようがないなと。
他人と一緒に住むルームシェア。
いいこともあれば、今回のようにビックリ体験だってするかもしれない。
何事も経験だと思い、アメリカ留学・移住を乗り越えていきましょう。
ルームメイトの驚きエピソードは他にもあるから、また別で披露したいと思う。
ルームシェアに興味がある人はこちらをどうぞ。

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