アメリカ留学で少しでも滞在費をおさえるなら、ルームシェアも選択の1つ。
ルームシェアといっても、ほとんどの物件は個室だし、専用バスルームを選べば、よりプライベートの確保ができる。
ルームメイトとお友達になれるかもしれないし、日本人以外と暮らせば英語環境にだって身をおけるなどメリットは多々。
一方契約のことで大家と揉めた、ルームメイトが変な奴だったとか、トラブルが起こりやすいデメリットも。
事実わたしもルームメイトといざこざがあったその1人。
今でもたまにふと思い出す。
あのぶっ飛んだルームメイトの思考は、一体どうなっていたんだと。
今回はわたしの常識を遥かに超えた、クレイジー女とのバトルについて書こうと思う。
自称モデルの女が犯した失態
初めて彼女を見たとき、女ながらに胸がギュッと締めつけられたのを鮮明に覚えている。
それはまるで一目ぼれに似た感覚とも言おうか。
「Reiko、こっちがもう1人のルームメイトのメリーだよ」
この家の借主、デビッドに紹介してもらったのがメリーとの初対面。
「どもー、私メリー。よろしくね」
軽くウェーブがかった綺麗なロングのブロンドヘアーに、ほんのり小麦色に焼けた肌、男性ウケしそうなタレ目にグリーンアイズが魅力的な女性。
身長はわたしと同じくらいの163cmくらいか、アメリカ人にしては小柄で全体的にスレンダー。
レースのついた膝丈の白コットンドレスさらっと着こなすオシャレさん。
やばーっ!激カワじゃん♡たぶん年齢は20代前半だろうな~。あぁ、可愛い♡♡
一瞬にしてメリーの虜になりそうだった。
「わ、わたしレイコ!よろしくね」
ニッコリ微笑み
「OK!じゃ、またあとでね~」
挨拶も早々にウエスタンブーツを履き、メリーはお出かけしていった。
あんな子がルームメイトだなんて♡仲良くなれたらいいな~。
なんとも言えないホワホワした気持ちのわたし。
2階建てのタウンハウスは、1階部分にキッチンとリビング、上の階にデビッド、メリー、わたしの3部屋があった。
メリーのお部屋はマスターベッドルームでプライベートバス付き。
デビッドは自室にお手洗いがついているタイプで、シャワーだけわたしとシェア。
大きなクローゼットがついた個室、半プライベートバスで確か家賃が$700くらいだった気がする。
サンタモニカまでも近いウエストLAというエリアで、この家賃は7年前の当時からしても破格。
デビッドはデスクやチェアーまでくれたり親切。
ハウスルールもなく快適に過ごせそうと、これからの生活にワクワクしていた。
この頃のわたしはまさかあんな経験をするなんて考えるはずもなく…。
いざ住んでみるとみんな生活リズムが微妙に違い、顔を合わせる機会はあまりなく会っても「Hi」と言葉を交わす程度。
当初メリーと仲良くなれたらいいな~と思ってたわたしも自分の生活が忙しくなり、次第にメリーのことも気にかけることもなく。
そうして引っ越しから数か月たったある日、衝撃的な出来事が起こる。
ちょうどその日は週末で、ベッドでゴロゴロしてたのよね。
そしたらコンコン、とドアをノックする人が。
開けてみるとそこにはメリーがニッコリ微笑んで立っていた。
「ごめんだけど、ちょっと手伝ってくれない?」
若干申し訳なさそうな顔をしながら自室へと手招きするメリー。
なんだろう?と思いながら、メリーに続く。
いくら一緒に住んでいるからといって、勝手にドアを開けることなんてなければ、他人のモノにさえ触らないのが暗黙のルール。
だからこれまでもメリーの部屋に入ったことなんてなく、これがお部屋初見学。
可愛い子ちゃんのお部屋はどんなだろ♡少しワクワクしながら中に入ると…。
なんとそこには想像もしない光景が目の前に広がっているではないか!
窓にはカーテン替わりにつけられた、インドに売ってそうなペイズリーと象さん柄のスカーフが重ねられ、赤紫のライトに照らされた部屋はインチキな占い館のよう。
壁一面にはオレンジ、黄色、赤の渦模様のサイケデリックな手描き風アートがずらり。
服は散乱し、開いたキャビネットからはヨレヨレの下着がはみ出てる始末。
床に直置きされたマットレスの上には、ぐちゃぐちゃに丸めたブランケット。
そして鼻をつく強いマリファナの香りと変なニオイ。
えっ!やば!汚部屋じゃん!!目がチカチカして気分が悪くなりそう…。
でもってクサい!!猫のおしっこ臭がすごいんだけど。
視線を床に向けると、元はベージュであろうカーペットの色がグレーに変色し、謎の黒いシミが至るところに。
たぶんこれはメリーが飼っている猫の仕業だろう。
マジ一刻も早くこの部屋から出たい(汗)
悪臭でしかめっ面になりそうなのを必死にこらえ言葉を発する
「で、お願いって何?」
「あのね、わたしの写真を撮ってほしいの。事務所からオーディションに使う写真を送るよう言われてて」
ん?事務所…!?なんのこっちゃ?みたいにポカンとした顔をしていると
「あぁ、まだ言ってなかったわよね。わたしモデルやってるのよ」
「今度受けるオーディションの写真が必要ってわけ」
少しトロンとした目つきで話しだすメリー。
「へぇ~、メリーってモデルなんだ。可愛いからやっぱりなって感じ」
「ふふ、ありがとう♡」
何の躊躇もなく服を脱ぎ、水着姿になる彼女。
メリーの目つきヤバ…。完全にキマッてるやつじゃん。さっさと写真撮って部屋に戻ろ。
色々とポーズしていくメリーを、渡された携帯で撮影していくわたし。
「こんな感じでどうかな、チェックしてくれる?」
「うん、いい感じ!ありがとね~」
メリー部屋から解放されたわたしは逃げるように自室へ。
ふわぁ~、なんだあの部屋!!汚いし臭い!!絶対虫とかわいてるよな…。うちの部屋にも入ってきたら嫌なんだけど…。
ゾワッと鳥肌が立ち、ものすごく不快な気分に。
あの汚い床の上をメリーは裸足で歩いていたことにも驚いた。
頻繁に漂ってくるマリファナ臭にも嫌気がさし、いつしかメリーを避けるように。
特に絡まなければ何の害もないし、まぁそれでいいかなんてやり過ごしていたところに、あの事件が起きた。
仕事から帰ってくると、いつも閉めてある自室のドアが半開き状態。
今まで勝手に開いていたことがなかっただけに、少しの不安が脳裏をよぎる。
そっとドアを押すと…
ううわ、クッッッサ!!!なんだこれ!!!
部屋中が猫のおしっこ臭に汚染されているではないか!!
ベッドを見ると置いた記憶のない、わたしのドレスが。
それを手に取ると、しっとり濡れていた。
恐るおそる鼻を近づけてみる。
うぎゃっっ!!!もしやと思ったけど、やっぱオシッコされてるじゃん!
しかもこれ、お気に入りのドレスなのに!!(怒)
黙っちゃおれん!怒りに任せてメリー部屋をドンドンとノック。
「ねぇ!わたしのドレスに猫がオシッコしたんだけど!!」
鼻をふくらませてフガフガするわたし。
ドアが開いた瞬間いつものウィード臭が鼻腔を占領する。
「え~、何?どうしたの~?」
呂律がまわらずふわふわした彼女に
「だから~、猫がお気に入りのドレスにおしっこしたの!!」
「あ~ら、ごめん~。もう~そんなことしちゃダメじゃん~」
そう言って猫を抱きかかえ頭をナデナデし、部屋の奥へ消えていくメリー。
は?何あの態度。まずわたしに謝れよ!
しばらくして戻ってきたかと思えば、黄色い容器を手にし
「これ、すっごくよく落ちる洗剤なの。あげるから使ってみて」
見るからに普通に市販されている洗濯洗剤をわたしに手渡す彼女に絶句。
いや!洗剤じゃねーだろ!ここはまず謝るの先がで、それからクリーニング代を渡すのが礼儀じゃない?
このドレス、ドライクリーニングオンリーだし、そもそも洗濯機に入れられないやつですけど!??
怒りと常識の違いにショックすぎて、もうなんて言えばいいのかわからなかった。
しかも渡してきた洗剤はほぼ空っぽ状態。
こんな非常識な人と一緒に住んでいることに恐怖すら感じた。
結局おしっこドレスをクリーニングに出しても着る気がしなくて処分。
この一件以来、奇妙なことが続くように…。
次回へつづく。

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