ネイティブのお友達がほしくて、デーティングサイトを漁ってた時期がある。
やっぱり語学学校内だと、できる友達といえば留学生のみ。
ネイティブと知り合いになるには、飲みに行ったり、パーティーに行ったり、何かしら行動しないといけないわけで。
欲をいえば30代以上の社会人と知り合いになりたくて。
そのほうが遊び方も似ているだろうし、何より語学学校の若いノリに疲れちゃってさ。
ネイティブと友達になりたかったのは、学校で学ぶのは基礎英語であって、日常会話ができるようになるのとはやっぱ違うなと感じたから。
もちろん基礎があってこその日常会話だから、学校で習うことは決して無駄ではない。
ただそれにプラスαしないと、普段の生活で問題なく生きていけるだけの英語力は身につかない。
だから手取り早く出会るデーティングサイトを使ったわけです。
ちなみにデーティングサイトというと”出会い系”みたいに、少しネガティブなイメージを持っている人もいるだろう。
でもアメリカでは約40%のカップルがデーティングサイトを通して知り合ったというデータがあるくらい、こちらでは出会いの一種としてメジャーなもの。
当時、わたしの友達でもサイトを使って彼氏ができた、結婚したなんていう話もちらほら聞いていたので、悪い印象は特になく、とりあえずサイト登録してみることに。
今回はわたしがサイトで出会った数名の中で、忘れもしない断トツに強烈なキャラ、ポールについて話そうと思う。
独特の世界観:ポールの場合
サイト登録をして間もなく、殿方からいくつかメッセージが届いた。
1つ1つメッセージとプロフィールをチェックしてと。
その中で目を引いたのが、フォトグラファーのポール。
職業カメラマンかぁ。
わたしの知らない世界を知っていそうで面白そうじゃん。
50歳手前のポールはヨーロッパ系の移民で、ニューヨークに長く住んでいたらしい。
お酒、ショッピングが好き。
特にアンティーク品を掘り出すのが趣味で、定期的にフリマに出かけているとな。
日本から多くのバイヤーが買い付けにくるローズボールには行ったことがあって、他のも行きたいな~と思ってたところ、近々ロングビーチのフリマに行くというポール。
ということでわたしも便乗させてもらうことに。
迎えたフリマ当日。
確かあれは7月だったと思う。
その日は雲1つないスカイブルーの空が広がり、眩しいくらい太陽の光が降る注ぐ、ロサンゼルスらしい真夏日だった。
今日はいつもに増して紫外線が強いから、日焼け止めとサングラス必須ね!
朝ポールからテキストが届く。
ちょっとしたことなんだけど、こういった気遣いがさ、大人を感じさせるよね~。
そう、ポールはメールの文面、言い回しから察するに、イギリスの伯爵のような紳士な男性だろうなと、わたしお得意の妄想が膨らんでいた。
この日に選んだ服は、ライトウォッシュデニムのショートパンツに、レースがついたベージュのコットンキャミ。
たぶんけっこう歩くだろうから動きやすい格好がいいだろうな。
でも初対面だし、ちょっとガーリーな感じでいこっと♡
どんな関係になろうとも、初対面ってのはやっぱり緊張するもので、無駄にドキドキしながらポールを待っていると…
家の前に着いたよ。
届いたテキストを見た途端、キューンと胸が締めつけられるお久しぶりな感覚と共に外へ出る。
外で出ると旧型Jeepのような軍用ぽい真っ黒の車が停められていた。
けっこう年季入ってるな。
ギギーっときしむような音を立てながらドアを開け降りてくる男性。
「どうも、どうも、はじめまして、僕はポールだよ」
ポマードのようなジェルで七三分けに整えられたブロンドショートヘアに、驚くほど透き通った白い肌、そして美しいブルーアイズ。
綺麗に整えられた少しボリューミーな口ひげに目がいくけど、それよりインパクト大なのは彼のファッションだ。
ベージュの膝丈チノパンに白Tシャツをぴっちりイン、ひざ近くまでピッタリ上げられたハイソックスに、おばあちゃんが農作業で被るような大きなツバの麦わら帽子。
人のこと言えないけど、カメラマンだからなのか個性的なファッションじゃん。
これをお洒落というのか、ダサいのかちょっとわたしには判断つなかいけど、すんごい癖つよいな(汗)
しばし固まりながら
「はじめまして、レイコです。来てくれてありがとう(笑顔)」
挨拶も早々にメタルのきしむ音と共に助手席のドアをあけてくれるポール。
シートに座った瞬間
お尻、アツっっ!!!
ここでホットケーキでも焼けんじゃないの?くらい熱々になった座席。
お尻を刺す痛みを感じ思わず飛び上がりそうになるも、平静を装うわたし。
そしてこの後わたしは灼熱地獄を体験することに…。
「ごめんね~。エアコン今故障中でさ、窓開けとくね」
え…あり得んでしょ。こんなサウナむんむん状態の車内でエアコンなしって拷問ですぜ(汗)
「大丈夫だよ~」なんて笑ってみせたけど、内心全然大丈夫じゃなーいっっっ!
そうしてポール号は軽快に走り出した。
だがしかし!なんせ外が暑いもんだから、温風しか入ってこないよね(汗)
ずっとドライヤーの風を浴びてるような感じが1時間くらい続きまして…。
顔中の毛穴という穴から汗が吹き出し、メイクなんてもうボロボロ。
しかも風の音が凄いもんだから、正直ポールが話していることの9割は理解できず。
Yea, Oh Yea? Wowしか言ってなかった。
会話が嚙み合わないまま、ロングビーチのフリマ会場に到着。
この頃には着ていたコットンキャミは絞れそうなくらい汗だくのビチョビチョ。
岩盤浴でもこんなに汗かいたことないよ…。
今すぐにでもシャワーを浴びたい、着替えたい衝動にかられる。
ポールは車を降りバックシートのドアを開け、何やらゴソゴソ。
「こっちに来て」
ポールに促されるまま車を降りるわたし。
「今日はカンカン照りだからしっかり塗らないとね。ほら、腕こっち向けて」
そう言って、スプレータイプの日焼け止めを入念にふりかけてくれるポール。
これでもか!ってくらい抜かりなくふりかけられたわたしの両腕は瞬く間に真っ白に(笑)
そして次の瞬間目がテンになるハプニングが起きたのだ。
「これあると紫外線から頭を守ってくれるからね、被っておくといいよ」
そう言ってニコニコしながら、彼とお揃いの農作業麦わら帽子を、ぽすっとわたしの頭にかぶせてきたではないか!!!
ちょっ!おじさん何してんねん!これ被るってめちゃ恥ずかしいやつ!無理やって!!
…とは言えず、引きつった顔で「ありがとう」これが精一杯だった。
お目当てのフリマはというと、ローズボールより規模が小さくゆっくり見てまわるにはちょうどいいサイズ感。
古着、家具、アンティーク、雑貨いろいろなモノが揃い、けっこう楽しいじゃないか。
わたしは私で見たいものがあったけど、ひとまずポールと一緒にまわってみることに。
そうするうち、ポールの行動にうっすら違和感を覚えた。
というのも、ポールが立ち止まるところといえば、ガスマスクみたいな軍事用備品や銃のパーツみたいなやつとか、わたしにはさっぱりわからない類いのものばかり。
「これ〇年式のやつだよね、いくら?」
ポールはやたらそっち系に詳しい。
ミリタリー系コレクター?っていうの?全然わかんないけど(汗)
サバゲー好きとはちょっと違う、なんかマジのヤバい奴なんじゃ…わたしの鈍い第六感が反応する。
「あれ〇〇ドルもするんだって!ぼったくりやん!!」
どこのお店に立ち寄っても高い、高い、とプンプン気味のポールにどう接していいかわからず苦笑い。
ずっと愚痴を聞いているのにも疲れてきたし、ポールという人間に危険フラグが立ったのもあり、早く帰って楽になりたい一心だった。
どうやらわたしの心の声が届いたのか
「レイコが見たいのなかったら、もう出よっか」
わたしは古着とか雑貨が見たかったけど、この変な麦わら帽子をかぶって歩くにも限界だったし、ポールのぷんすか愚痴に付き合うのもうんざりだったから、出ることに賛成した。
これがちょうどお昼1時くらいの話。
「ねぇ、お腹すかない?ロングビーチにきたら絶対立ち寄る美味しいタイ料理屋さんがあるんだよ」
おーーーーーーいっ!お前さんもタイ料理かよーーーー!!
頭の端っこに追いやっていたサムの悪夢が蘇る。
ねぇ、アメリカ人は口を開けばタイ料理なわけ???
ま、でもお腹すいたし、タイ料理好きだからいいや。
新規開拓ってことで。
「そだね、お腹すいたし行こっか」
車に乗り麦わら帽子を脱いだ瞬間、湯だったタコのように頭からモワッとした湿気があふれ出す。
ひゃ~この帽子絶対臭いやつだよね。ニオイ嗅いでみたいけど、ここは我慢、ガマン。
臭いとわかっているのに、つい確認したくなっちゃうんだよな~。
地獄絵図になってないかサイドミラーでチェック。
案の定、髪の毛は汗でぺったんこ、眉毛の端は完全に消え去り、半マロ状態、アイライナーが落ち完璧なパンダ目になった、恐ろしい姿のわたしが映し出された。
笑えるくらいわたしの顔ヒドイな(笑)
でもポールとはもう会わない気がするから、何でもいいや。
わたしの経験上、レストランのサーバー、お客さんがその国の人達じゃない場合、だいたいフェイクであることが多い。
例えば、このタイ料理屋さんもそう。
見た感じサーバーさんにアジア人は見当たらない、お客さんにもアジア人がいない。
こういったレストランは偽物タイ料理の確率大なんだよね。
アメリカ人好みに合わせて、変に甘かったりさ。
まぁ予想は的中しちゃうよね。
レストランに入ったときから何か嫌な予感したんだよ。
だってさ、店内が広いし綺麗すぎるんだもん。
失礼な言い方だけど、タイとかベトナム料理はこじんまりしてて少し小汚い方が当たりなんだよね~。
ポール君、アジアを知るにはまだまだ甘いよ。
お味は可もなく不可もなく、食べれるレベル。
ポールは旨いな~って喜んで食べてたけど。
NY生活が長かったせいなのか、ポールの英語は早すぎて2割くらいしか聞き取れなかった。
相づち打つしかできず、わかってる風を装うも、質問されると全くわからず会話は噛み合わない。
やっぱさ、わかったふりは良くないよね。
今ならもっとゆっくり話して、そう言えるけど、あの当時どうもその一言がいえなくて。
きっとポールも全然楽しくないんだろうな。
こりゃ、きっと次はなしパターンね。
そんなことを考えているうちに家へ到着。
ポールと簡単に話してその場を去った。
はじめてのデーティングはグダグダな結果に終わる。
翌日…
次の人でも探すか、なんてサイトを見ていたらポールからテキストが入った。
次さ、シューティングレンジ行かない?
まさかのおかわりがきたのだ!
シューティングレンジって射撃場だよね。
なんか面白そうだから行ってみようかな。
YESの選択をしなければ、わたしはあんなに背筋が凍る恐ろしい体験をせずに済んだのに…。
次回へ続く。
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