1話はこちらから↓
ロサンゼルスのとあるビルの1室。
小さな部屋の入口には受付カウンター、横の棚には箱に入ったナゾの商品らしきものがずらり並べられている。
そして4人でいっぱいになる丸テーブルが中央に2つ。
このテーブルを囲み韓国人Hと、ラテン系のおばさん5人から猛プッシュを受けているわたし。
H「Reiko、このコスメ知ってる?とても優秀な商品なのよ」
H「よくあるネットビジネスみたいに商品を人へ勧める必要はないし、自分で使う分だけ購入してるメンバーもたくさんいるの」
H「でもReikoが勧誘した人がさらに他の人へ勧めて、どんどん下が増えると自動的にReikoへコミッションが入る仕組みでね」
韓国人Hは自分のスマホアプリを開き、この会社から毎月どれだけ不労所得が入っているか見せてくれた。
「ほら見て!今月もう700ドルも報酬が入ってきてるのよ、わかる?」
「毎月何もしなくてもお金が入ってくる仕組みでね」
「本業とは別にこういった収入があると将来も安心でしょ」
一生懸命説明してるけど、Hさんそれ立派なネットワークビジネスじゃない…。
そもそもなんでわたしはまたこんな勧誘を受けているのかといいますと、スムーズにこの場へ連れてこられたHの巧妙な手口があったから。
それはある日のこと、オフィスにかかってきた1本の電話からはじまったわけでして…。
Hi Reiko, how are you?
とある語学学校で働くHからだ。
Hとは語学学校とエージェントという関係だけでなく、実は以前わたしもこの学校に通っていたことがあり、そのときからの知り合いなのだ。
当時からわりと近い関係で、わたしがエージェントとして働くようになってから、仕事面でもさらに良好な関係を築いていたのよ。
そんなHからの電話。
仕事の用件だろうといつも通り電話をとると、最近どう?みたいな世間話。
ん?これは何の電話…?
なかなか本題を話さないHに多少疑問を感じてたとき…
H「ねぇReiko、近々ゆっくりビジネスの話がしたいんだけど時間とれない?」
R「ビジネス?どんな話?」
H「電話じゃなくて直接話したいのよ」
R「そうなんだ、OK!」
H「じゃあ、この日の仕事終わりは?ご飯でも食べながらミーティングしましょうよ」
このときは学校のカリキュラムが変わるとかそんな話かと思い…。
でもって、ここの学長とうちのボスがプライベートでも親交があり、わたしも一緒にランチをしたし、他の学校より距離は近いからディナーミーティングも疑いもなく受けたわけでして。
Hとの待ち合わせは、学校の近くにある韓国スーパーのフードコート。
フードコート!?って思ったけど、まぁデートじゃあるまいし、そこは特に気にかけず。
すでに席にいたHに声をかけるわたし。
H「Oh hi, Reiko!」
H「お腹すいたでしょう~。ひとまずキンパでもつまみましょうよ」
そういってHがキンパを買いに席を立つ
H「Reikoはここに座ってて」
R「え、いいよ。わたしも一緒に行くってば」
H「いいの、いいの。いつも世話になってるんだから気にしないで」
そんなやりとりを踏まえつつ、キンパを手に持ち戻ってきたH
ここでも最近どう?仕事の調子は?旦那とはどう?なんていう他愛もない話。
30分くらいは合わせてたけど、本題のビジネスについては話題に上がらず。
R「ところでH、ビジネスの話って何?学校のカリキュラムが変わるとかそんな感じ?」
H「あぁ、それね。キンパも食べ終わったことだし、そろそろ行きましょうか。連れていきたいことがあるのよ」
R「…ん?ここでできない話??」
なかなか話したがらないのはナゼ?
怪しい感じもするけど、とりあえずHについていくか。
学校のあるビルの中へ入るHを後ろから追うわたし。
なんだやっぱ学校で話そうってことか。
わたしは何を疑ってたんだろう。
ちょっとした安堵を覚えたのも束の間、Hは学校のある階ではないエレベーターのボタンを押す。
えっ!?そこ学校じゃない。どこ行くのよ。
わたしの心配をよそに、Hはこちらを見てニッコリ微笑む。
着いた先はオフィスがいくつか入っているフロアだった。
そうしてスタスタ歩くHについて行くと、あのサロンのような部屋に到着したってわけ。
このときすでにラテン系おばさんもスタンバイしてて。
H「まぁ、座ってよReiko」
促されるままに着席。
間髪入れずHが話はじめた。
H「今日話したかったのは、まだリリースしたてのNewビジネスのことでね」
H「ほら、私達そんなに若くないし、将来の資産形成とか真剣に考えないとって時期じゃない!?」
H「そんなときに出会ったのがこのビジネスでね、まだ始めてる人が少ないから今がチャンスなのよ」
いやいや、学校と全然関係ないし。なんだよNewビジネスって!
これ怪しいやつじゃないでしょ?ほら、かつてAちゃんが懸命に勧めてきたアムウェイみたいなさー。
Aちゃんとの間で起きた出来事が、走馬灯のようにフラッシュバック。
H「ねぇ、Reiko聞いてる?」
Hの呼びかけに、ハッとするわたし。
それからは将来について不安を煽り、今が参入するチャンスとか言って焦らせ、もうネットワークビジネスの典型的パターンよ。
なんでLAに来てまでネットワークの勧誘受けないといけないのさ…(涙)
しかもクライアントとしてけっこう信頼してたHから、まさかこんな話をされるなんて。
Hには何の悪気もないんだろうけど、わたしはまぁまぁショックを受けた。
その後もHは、今度セミナーがあるから一緒に行こうだの、ラテン系おばさんからはこのビジネスに参入するメリットを永遠と聞かされ2時間。
しびれをきらしたわたしは
「今日はもう遅いし、ビジネスについては考えるね」
Hはしつこくセミナーに行こうと誘ってきたけど、半ばHを振り切る形でその部屋を去った。
後日”ネットワークビジネスには興味ない”とやんわりメールで伝え終了。
その後も彼女とは留学方面では繋がっていて、たまに仕事をもらったり振ったり、当たり障りない関係が続いている。
どこにでも闇は潜んでいる…そして付き合う人は選ばないと、そう感じたのであった。
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