アメリカで出会ったヤバい人:ネットワークビジネスおばさんの手口

世界中どこにでも存在するネットワークビジネス。

わたしはあの独特なビジネス手法が苦手で、そういった人たちに出会うとサッとフェードアウトしてきた。

別に彼等を非難はしない。

ただ苦手なのだ。

あの不安を煽り、一生懸命勧誘してくる様が…。

目次

ネットワークビジネスとの出会い

あれは20代後半のこと。

とあるSNSサイトで1人の女性から”会えませんか?”とメッセージが送られてきたのが、事のはじまり。

この子をAちゃんとしよう。

Aちゃんはわたしの投稿によくコメントをくれる子で、勝手に親近感がわいていたのよね。

SNSって会ったこともないのに、メッセージやコメントのやりとりを重ねると、何だか知っているような感覚に陥る。

Aちゃんも例外ではなく、わたしが勝手に”お友達”のような錯覚を起こし、何の疑いもなく会うことになったんだ。

大阪、難波にあるマルイのカフェで待ち合わせ。

Aちゃんどんな子だろう♡

顔出しをしていないAちゃんの容姿を想像しながら、ワクワクしてカフェへ向かう。

それはまるで出会い系で女の子と会うおじさんの気分だ。

透き通るような白い肌に、さらさらの黒髪ショートボブがよく似合う女性が、こっちこっち!といわんばかりに手を振っているのが見えた。

「お待たせしてごめんね、はじめましてReikoです」

「いえいえ大丈夫です!Aです、こんにちは♡」

笑顔が素敵で清楚なAちゃんは、わたしの友達にはいないタイプの人間で新鮮な気分に。

初めて会うのに前から知ってるかのような、まさにSNSあるある(笑)

Aちゃんは元中学校の国語教師だったらしく、両親ともに先生という教育一家。

通りでなんかお堅い感じがするわけだ。

話は仕事や恋愛のこと、女子トークで盛り上がり、あっという間に2時間経過。

「ねぇReikoさん、次はうちの家で食事なんてどうですか?わたし手料理振舞います!」

おぉ、いきなり家飲みね。

急展開だけど、まあいっか。

Aちゃんいい子ぽいし。

何の疑いもなく誘いをうけ、後日彼女の家へ行くことになった。

Aちゃんの家は難波から電車で約1時間、大阪の東側にある郊外。

1人暮らしの女の子のお家なんて、ちょっとドキドキしちゃう♡

下心モリモリのオトコのような感覚で足取り軽く、デザートを手土産にAちゃ宅へ。

彼女の家は〇〇ハイツみたいな低層アパートで、1階がAちゃんのお部屋。

変に背筋を伸ばしてインターホンを押す。

白いエプロン姿のAちゃんが、ニッコリ微笑んでお出迎え。

ナニ、ちょっとかわいいじゃないか。

こうして殿方はあれやこれや妄想を膨らませ狼となるわけだ。

なんていうおかしなことが一瞬頭をよぎるも、促されるままにお部屋に入りまして。

Aちゃんのお部屋はおそらく8畳くらいのワンルーム。

パッとみた感じ家具は多くないけど、小物が溢れる少し窮屈な空間。

部屋の中央には不自然に配置されたカウンターテーブル。

その上にカセットコンロがポンと置かれている。

テーブルを挟んで正面にAちゃんが立つ形で向かい側を指さし

「Reikoさんはこっちの椅子に座って」

言われるがままに着席。

カセットコンロの上には天ぷら鍋みたいなものがセット。

お、今晩は天ぷらですか。

カウンターの小料理屋さんのような雰囲気の中、Aちゃんのとった行動に違和感が…。

どこで用意していたのか、スケッチブックを取り出しページをめくり、話をはじめる彼女。

「早速ですがReikoさん、普段使われているお鍋にはどれだけ有害な物質が含まれているかご存じですか?」

おいおい、乾杯とかなくいきなりなんだよ。

「えっ、あ…ごめんわからないや」

戸惑い気味に答える。

「ですよね、じゃあわたしがこのスポンジでこすってみますね」

そう言って、スチールウールのようなスポンジを水に含ませ、目の前にある鍋をゴシゴシこすってみせる。

そうすると、みるみるうちに透明だったお水が黒く濁りはじめた。

「ねぇ、すごいでしょ。この黒く濁ったものこそが有害物質なんです!」

「ではこっちの鍋でも同様に試してみますね」

テーブル下から新しい鍋をとり、カセットコンロの上に置くAちゃん。

そうして同じスポンジで鍋をゴシゴシ。

「ほら、見てください!このお鍋はこすってもお水は透明なまま!有害物質が含まれていないということがわかります」

「私達はこんな有害物質の溶け出すお鍋で調理をしているなんて恐ろしくないですか!?」

体へ及ぼす悪影響をスケッチブックに書き、指をさしながら興奮気味の彼女。

一体なんだ、リアルテレビショッピングか!?(汗)

わたしは今日、ご飯を食べようって誘われここに来たんだよね。

なんで鍋の説明を聞かなきゃよ。

お腹すいたし、飲み物もないしもう何なのコレ。

状況がつかめず困惑する中、Aちゃんはおかまいなしに続ける。

「今日はですね、この魔法のお鍋を使ってReikoさんに天ぷらを作りたいと思います!」

あぁ、ご飯食べれるんだ…。

にしてもこれ絶対なんかおかしいやつだよな。

「Reikoさん、この油はですね…」

おいおい、次は何だよ…油の押し売りか!?

苛立ちを隠しつつ、聞くふりをするわたし。

Aちゃんはその油がヘルシーなんだと力説し、目の前で野菜の天ぷらを揚げだした。

「Reikoさん、この魔法の油で揚げた天ぷら食べてみてください!ソースなしで十分美味しいですから」

サクッっ。

「うん、軽くてサックリこれはお箸がススムねぇ」

「ですよね!この油は原材料にこだわり…」

お手製ノートのページをめくり、いかにこの油が健康的なのかを説明しはじめた。

あの…こんなん聞かされてご飯食べるって、全然おいしくないんですけど。

とにかくこの空間にいることがしんどくなり…。

「ごめん、Aちゃん。お手洗い借りていいかな?」

「どうぞどうぞ!ここ真っすぐいった右側のドアです。よかったら洗面所にある石鹸も使ってみてください♡」

トイレへ逃げ込むわたし。

いかん、いかん!なんかまずい展開よ。

どうしたものかと頭を抱えていると、視界にAちゃんの言う石鹸が目に入った。

何気なくソープボトルを手に取り見てみる。

ゾクゾクッッッ!!!!!!

背中に凍りつくような冷たい一筋の汗が流れた。

なんとそのボトルにAmwayという文字があるではないか。

Amwayといえば、かの有名なネットワークビジネスじゃん!

これはまずい!わたし勧誘される!!!

一刻も早くここを出なくては!

何もなかったかのように席へ戻るわたし。

このあとも他の商品を色々と説明されたけど、一切耳には入らず。

お部屋にある小物達をよく見てみると、全部Amway商品で…。

「ReikoさんAmwayって聞いたことあります?変なイメージを持っている人も多いけど、実はとてもこだわって作られたプロダクトばかりなんですよ」

「セールスを上げるとレベルもどんどん高くなって、豪華なパーティーに呼ばれたり、海外旅行もプレゼントされるんです」

「尊敬する方のアドバイスを聞いて、これまで一生懸命活動してきた結果、今年ついにわたしもそのパーティーに呼んでもらえて、もう感激!」

人生で一生懸命になれることはあるか?今の収入に満足してるか?充実感を味わいたくないか?

あれやこれやサクセストーリーを並べ、Amway商品を勧めてくるAちゃん。

あぁSNSで人と会い、こうやって勧誘するんだ。

女性だからって油断したわ。

1時間もかけてきて、時間の無駄じゃん。

わたしの気持ちなんておかまいなしに、弾丸トークを続ける彼女を遠い目線で見つめていると。

ピンポーン。

そのときインターホンが鳴った。

すかさずAちゃんがドアをあけると、そこにはまたもや真面目そうな女性が立っていた。

「待ってました!ささ、中に入ってください。今ちょうど一通り説明が終わったところで」

何なに!Aちゃん仲間呼んでたの!?

マジやばいやつ。

「Reikoさん、こちらわたしがさっき話した尊敬するBさんです」

30代くらいの女性がわたしの方を見て口をひらく

「はじめましてReikoさん。Aから説明があった通りAmwayは本当に素晴らしい商品ばかり扱っている優良企業なんですよ」

AちゃんとBさんのダブル攻撃で、さらに話を盛り上げる2人。

ここまできたらもう我慢の限界。

楽しい食事会かと期待して、ホイホイ来たわたしがバカだった。

悔しい気持ちと呆れた感情が入り混じり

「あの!わたし帰ります!Amwayがいい商品だということはわかりました。でも買う気はないので!」

そそくさと荷物をまとめてAちゃんの家を飛び出した。

あのときの苦い記憶が一気にフララッシュバック。

「Hey Reiko! Are you listening?」

Hの声にハッと我に返るわたし。

あ、そうだ今わたしはロサンゼルスにいるんだ。

密室で韓国人とラテン系のおばさん5人に囲まれ、恐怖を覚えるほどの勧誘を受けている。

クライアントとして長年良好な関係を築いてきた、このおばさんに。

またやられたよ…。

2話へ続く。

わからないことなど何かあれば『おたずね箱』からメッセージをお願いします。

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