結婚をする前、わたしはロサンゼルスでルームシェアを4回している。
はじめてのルームメイトはサンタモニカに住んでいたときの白人女性パメラ。
この人もなかなかヤバいエピソードがあるからまた披露するとして、今回は2回目のルームシェアで起きた奇妙な出来事を書いていきたい。
異常な彼女と謎行動の彼氏
1軒目のルームシェアであるパメラ宅を出た理由は、単にサンタモニカから離れた場所の学校に転校をしたから。
もし転校していなければ気になるところはあったものの、あのまま住み続けていただろう。
ビーチまで徒歩で行ける最高な立地の上、家賃が安かったしね。
Party三昧だったサンタモニカの次に選んだのは、パロス・バーデスという丘にポツンと建つ、私立カレッジ内にある語学学校だった。
キャンパスの目の前は、まさにオーシャンブルーの美しい海が、遥か彼方まで広がる絶景。
ただいい所はそれくらいしかなく、周りには他なにもない辺鄙な場所。
サンタモニカの学校で遊び呆けてしまい、渡米から3か月経っても英語が相変わらずだったわたしには、
勉強に集中するのに必要な環境だった。
おかげで帰国する1年後には、だいぶ英語にも慣れることができて。
次に見つけたルームシェア先は、ロサンゼルス空港から南下したトーランスというエリアのコンド。
学校までは車で30分かかったけど、この当時はすでに免許を取り車も購入していたから、学校の近くに住む必要はなく。
ちなみにトーランスは日系企業が多く、和食レストランに日系スーパーもたくさん。
英語を使わなくても生きていけるんじゃ?ってくらい日本人が多く住む街。
このコンドにした決め手は、室内がフローリングで綺麗、ゲートコミュニティ+無料パーキングつきだったから。
パメラのところは好立地だけど、お部屋がカーペットでシミ汚れが目立つ。
カーペットの上を靴で歩くことにも抵抗がありまして(汗)
これは今でもなんだけど。
その点トーランスのお部屋は、全室フローリングだからそういった心配もなし!
日当たり良好、大容量クローゼットつき。
オーナーが購入したばかりのコンドらしく、初の入居者を探していたのもあり、お部屋がピカピカだったの。
大家が別のところに住んでいるのもポイント高し。
内見して即決。
「これで契約は終わりね。鍵渡すからいつでも入居してOK」
「マスターベッドルームにはアメリカ人カップル、もう1つのお部屋には韓国人男性がすでに入居したから」
「バスルームはこの韓国人男性とシェアしてね」
と、台湾人の女性大家さん。
年齢は50代くらいだろうか…。
何かと気にかけてくれて、一度彼女の家で夕食をよばれたこともある。
わたしが病気で本帰国をしてからも、ときどき”体調はどう?なんてメールをくれてさ。
この家はアタリだったな。
ただ今でもふと思う。
あの事件の真相はどうなんだろう?
彼が起こした謎行動の意図とは…?
パメラ宅の退去日、わたしは風邪をこじらせていた。
できることなら寝てたい…でも出なきゃだしな…。
ふらふらになりながら、友人に引っ越しを手伝ってもらい。
U-Haulで小さなトラックを借りて、荷物を移動させた。
家具付きの部屋に住んでいたから、運んだのって基本服に日用品とか細々したモノくらい。
当日パメラは仕事で、結局別れの挨拶をできずに家を出たんだよね。
そしたら後日お怒りのテキストが送られてきてさ。
「Reikoの使ってた部屋のカーペットに大きなシミがあるじゃない!」
「デポジットはクリーニング代に充てるから返金できないからね!!」
いや、ちょい待てよ。
カーペットのシミなんて入居したときから、いろんなところにあったわ!(怒)
「わたしが入ったときにはすでにそんなだったけど…」
「違うね。明らかに広がってるし濃くなってる!」
「クローゼットの中だって傷がついてるし」
ぶっちゃけこのやりとりを続けるのが面倒になり
「あーわかったよ、デポジットいらないから」
このテキストでパメラ劇場は終了。
汚部屋、いきなり怒鳴るとかパンチのきいた人で、おもしろ話もあるから、そのうち書こうかと思う(笑)
アメリカではルームシェアは一般的で、デポジットにまつわるトラブルもよくある話。
わたしは面倒事が嫌い、家賃も破格だったからデポジットくらい返金されなくてもいいや、とパメラの主張を受け入れたけど。
揉めないためにも入居時に部屋をチェックして、破損や汚れがあるなら写メしておきましょ。
ポカポカとした日曜の昼下がり。
この日はロサンゼルスらしい雲1つない真っ青な空が広がる、
まさに引っ越し日和だった。
「Hi. Are you Reiko?」
コンドミニアムの1階にある木製のドアをあけると、笑顔でこちらに手を振る2人のカップルが立っていた。
このカップルこそが後に不可解な行動を起こすのである。
「Hi. I am Reiko. Nice to meet you!」
クセのあるクルンとした黒髪ロン毛、口ひげもっさりの長身白人男性が口を開く
「I’m Tim. Nice to meet you, too」
「She is Abbie, my girlfriend」
小柄で少しぽっちゃり、小麦色の肌に大きな目が印象的なアビー。
「大家さんから、新しいルームメイトのReikoが入るからって聞いてたのよ~」
挨拶も早々に、わたしと引っ越しを手伝ってくれている友人を家へ招き入れ、
キッチンの使い方や、わたしが使用できる食器棚のスペースなど教えてくれた。
「わたしね、料理が好きでキッチン用品も一通りあるのよ」
「Reikoも自由に使っていいからね♡」
ニッコリ微笑むアビー。
調理器具は一切持ってなかったからありがたい。
「次はわたしたちのお部屋を見せるわね」
嬉しそうに、こっちこっちと手招きをするアビー。
3ベッドあるコンドのマスタールームがティムとアビーの部屋。
キングサイズのベッドが中心にドン!と置かれていて、足元側に大きなテレビがあるだけといたってシンプル。
「うわぁ~広くていい感じ」
「でしょ~部屋にバスルームもあるから快適よ」
わいわいとルームツアーを楽しんでいたところに、隣の部屋のドアがこそっと開いた。
「Hi, I’m Michael」
40代後半くらいの韓国人男性がひょこっと顔を覗かせ、ペコリと一礼。
ティム、アビー、マイケル、3人との共同生活が後に奇妙な出来事を招くとは、このときは知る由もなく…
ただこれからはじまる新しい生活に胸を躍らせるだけであった。
つづく。